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東京高等裁判所 昭和39年(ネ)2283号 判決 1966年5月31日

ズノー光学工業株式会社破産管財人

控訴人 松尾菊太郎

被控訴人 株式会社ヤシカ

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴会社は控訴人に対し金二、五三九万五、一三〇円および内金一、九〇八万五、九三〇円に対する昭和三六年一月二一日以降、残金六三〇万九、二〇〇円に対する同年二月二一日以降、各完済まで年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴会社の負担とする。」との判決および保証を条件とする仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は「控訴棄却」の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述および証拠の関係は、左記のほかは、原判決の事実摘示記載のとおりであるから、これを引用する。

控訴代理人は次のとおり述べた。

(一)  ズノー光学工業株式会社(以下「倒産会社」という)が、昭和三六年一月二一日自ら会社更正の申立をしたこと、同月二三日手形の不渡を出し支払停止したこと、および被控訴会社主張の後記(一)の事実は、いずれも認める。

(二)  被控訴会社が本件相殺の自働債権とした前受金は、現金の授受がなされるのではなく、被控訴会社の振出にかかる約束手形の交付を受けて、これを取引銀行で割引き現金に代えて倒産会社の融通資金としたものである。倒産会社は右手形の支払期日に直接被控訴会社に右手形金額を支払うのではなく、満期前に右手形を買い戻して被控訴会社に返還するか、もしこれを買い戻すことができなかった場合は、右手形を書き替えてもらっていた。右のような取引の実態からみて、上記前受金は単なる手形の貸借であって、手形金額に相当する金銭の消費貸借と解するのは誤である。手形の交付によって金銭の消費貸借が成立するというのは、手形が容易に現金化され、あたかも現金の授受と同様な経済的機能をもつからである。しかし手形を現金化するには、破産会社は取引銀行でこれを担保として金銭の借入をするか、或はこれを割引してその対価として金銭を受け取るかのいずれかの方法によらねばならない。したがって、手形を現金化した場合には、被控訴会社と取引銀行との間では手形金支払義務、破産会社と取引銀行との間では償還義務、破産会社と被控訴会社との間では手形返還義務(または金銭返還義務)の各法律関係が発生し、この三面的法律関係は一体不可分の性質を有する。この三面的法律関係は手形が支払われたときに始めて解消し、破産会社の債務は被控訴会社に対して単一化する。このような関係にある上記前受金が金銭の消費貸借の性質を有しないことは、いうまでもない。したがって、仮りに被控訴会社の主張するように、破産会社と被控訴会社との間にその主張のような相殺の合意が成立したとしても、本件相殺の自働債権は上記のとおり手形返還請求権と解せられるから、これと受働債権である本件売掛代金債権とは異質の債権で、その相殺は効力を生ずるに由なきものである。

(三)  <省略>

(四)  仮りに右分割弁済契約が認められないとするも、破産会社が支払を停止したのは昭和三六年一月二三日であるから、右停止後である同月二五日になされた本件相殺は、支払停止後の債務の弁済に等しい債務消滅に関する行為で、破産法第七二条第一号、第二号に該当し、否認の対象となる行為である。そして、本件売掛代金請求の訴は、被控訴会社の相殺の効力を否認し、売掛代金債権が現に存するものとしての請求訴訟であるから、右請求中には否認権の行使に基づく請求またはその抗弁をも包含するものである。したがって、本件訴訟の提起によって否認権が行使されたものと解せられるから、本件相殺は失効し、被控訴会社は右相殺の効力を破産管財人である控訴人に対抗することができない。

被控訴代理人は、次のとおり主張した

(一)  <省略>

(二)  <省略>

(三)  <省略>

(四)  <省略>

(五)  本件手形の授受に際し、被控訴会社と破産会社との間に「破産会社の経営状態が悪化し、手形の不渡を出したような場合は、被控訴会社が破産会社に対して負担する買掛代金債務と被控訴会社が破産会社に対して有する前記貸金債権、もしくは前渡金名義の債権とを直ちに被控訴会社において相殺することができる。」旨の合意が成立した。この合意の内容は、右のような特定事業が生じたときは、破産会社は前記債務について期限の利益を失い、他方被控訴会社の買掛代金債務についても、その時に期限の利益を放棄して対当額で消滅するというものである。ところで、破産会社は昭和三六年一月二三日には不渡手形を出すなど、右合意にいう特定事業が生じていたでのあるから、被控訴会社が本件相殺の意思表示をなした昭和三六年一月二五日当時およびそれ以降には相殺に適する状態にあったというべきである。

(六)  右相殺の特約が否認権の対象となる法律行為に該るとの控訴人の主張は、これを否認する。右相殺の特約は、破産会社の従来の納期遅延および前受金返済の履行状況に鑑み、被控訴会社としては全額直ちに返済を受ける意向であったところ、たまたま取引銀行である第一信託銀行(現在第一銀行に合併された)から今回も面倒をみてほしいと依頼されたので、止むなく本件手形を振り出し交付することとなったものである。右のように銀行の依頼に基づくものであるから、本件手形を振り出した昭和三五年一二月二〇日当時には、破産会社が倒産するとは全く考えられなかったものであって、ただ無担保の貸付であったがために、万一の場合を慮って前記相殺の特約をしたものである。かように、破産会社がなお通常の状態で経営を継続している間に相殺の特約が成立し、その特約に基づいて相殺の意思表示がなされたときは、破産法第七二条第一号、第二号に該当するものとは解せられない。<以下省略>。

理由

破産会社は昭和三六年四月一四日東京地方裁判所において破産の宣告を受け、同日控訴人がその破産管財人に選任されたこと、破産会社は従来被控訴会社に対し、代金は毎月末日締切り、翌月二〇日支払の約定で、カメラ用レンズ類を販売して来たところ、被控訴会社に対し、昭和三五年一二月中に売り渡した製品の代金額は金一、九〇八万五、九三〇円、昭和三六年一月中に売り渡した製品の代金額は金六三〇万九、二〇〇円であったこと、破産会社が右売掛代金合計一、五三九万五、一三〇円の債権を昭和三六年二月一五日訴外株式会社三信製作所外六八名に譲渡することを約し、その譲渡の通知は同年三月六日被控訴会社に到達したが、控訴人は同年八月二日右株式会社三信製作所外六八名から、さらに前記売掛代金債権の譲渡を受け、右譲渡の通知は翌三日被控訴会社に到達したことは、いずれも当事者間に争がない。

そこで、被控訴会社主張の相殺の抗弁について判断する。

被控訴会社が破産会社に対し、昭和三六年一月二五日付内容証明郵便を以て、破産会社に対する金二、六〇〇万円の貸金債権をもって破産会社の前記売掛代金債権のうち同日現在における金二、五二〇万八、七三〇円とを対当額で相殺する旨の意思表示をなし、右郵便がその当時破産会社に到達したことは、当事者間に争がない。

被控訴会社は、被控訴会社が昭和三五年一二月二〇日破産会社に対し金額二、六〇〇万円、満期昭和三六年三月二〇日とする約束手形一通(以下本件手形という)を振り出し交付したことに基づいて、破産会社との間に弁済期を昭和三六年三月二〇日とする金二、六〇〇万円の金銭消費貸借が成立した旨主張するに対し、控訴人はこれを争い、本件手形の授受は単なる手形の貸借で、破産会社は被控訴会社に対し本件手形の返還義務を負ったにすぎないのであって、これによって金銭消費貸借は成立しなかったものである旨主張するので、この点について判断する。

被控訴会社が、従来、破産会社との取引に当り、前渡金名義で一定金額の約束手形を破産会社に振り出し交付し、破産会社において右手形をその取引銀行である訴外第一信託銀行株式会社で割引いて資金を得ていたこと、および被控訴会社が昭和三五年一二月二〇日破産会社に対し、前渡金名義で本件手形を振り出し交付し、破産会社が右手形をその振出当日前記銀行(中野支店)で割引き、同銀行から日歩金二銭三厘の割合による満期までの九一日間の利息として金五四四、一八〇円を差し引いた金二、五四五万五、八二〇円の金員を受領したことはいずれも当事者間に争がなく<省略>を綜合すれば、次の事実を認め得る。すなわち

1  被控訴会社は第一信託銀行の斡旋により昭和三二年八月三〇日破産会社との間で、破産会社の製造するカメラ用レンズを継続して毎月一定数量以上購入する旨の取引契約を締結したが、その際、破産会社の運転資金として前渡金名義で合計金一、〇五〇万円を貸与することを約し、同年一〇月二四日を満期とする金額三五〇万円の約束手形をはじめとし、同年八月三〇日に同年一一月二七日を満期とする金額五〇〇万円の約束手形を、同年九月一四日に同年一二月一八日を満期とする金額二〇〇万円の約束手形を、それぞれ振り出し交付し、破産会社は右各手形を、その交付を受けた都度、前記第一信託銀行(中野支店)で割引き、運転資金に充てた。右運転資金の貸与については、昭和三三年二月末日まで据置き、昭和三三年一月から漸次内入弁済し、同年一二月末日までに完済すべき約定がなされていたので、破産会社は、前年手形の満期が到来した際には、その度毎に被控訴会社から新に同金額の手形の振出を受け、これを右銀行で割引き、その割引金に自己の資金を足して満期到来の手形を決済して順次受け戻して来たが、昭和三四年一月一三日頃までに前記一、〇五〇万円を被控訴会社に完済した。

2  その後、破産会社は、昭和三四年三月二〇日から昭和三五年二月二一日頃までの間に前後五回に亘り、前同様の趣旨で被控訴会社から約束手形五通(金額合計五、〇五〇万円)の振出を受け、これらの手形を前記銀行で割引き、運転資金に供し、右各手形の満期に順次決済したが、昭和三五年六月初め頃に至り、多額の運転資金の必要に迫られたので、同月一五日頃被控訴会社に対し金二、九〇〇万円の貸与を申し入れた。被控訴会社は右申入を容れ、その貸与の方法として破産会社に対し、同月二〇日に同年九月二〇日を満期とする金額九〇〇万円の約束手形を、同年七月二〇日に同月九月二〇日を満期とする二、〇〇〇万円の約束手形を、それぞれ振り出し交付し、破産会社は即時右各手形を前記銀行で割引き、運転資金に使用したが、右金二、九〇〇万円の貸与に当って、破産会社は同年七月から同年九月まで毎月一〇〇万円宛、同年一〇月から同年一二月まで毎月三〇〇万円宛、昭和三六年一月から同年三月まで毎月四〇〇万円宛、同年四月残額五〇〇万円を弁済する旨、および破産会社において相違なく右のとおり分割弁済を履行したときは被控訴会社は、右各手形をその満期に決済するため、九〇日先を満期とする金額二、六〇〇万円の約束手形を、右二、六〇〇万円の手形の満期には一二〇日先を満期とする金額一、七〇〇万円の約束手形を順次振り出し交付する旨の約定がなされた。

3  破産会社は、昭和三五年七月から同年九月まで合計金三〇〇万円を約定どおり返済し、前記約定に従って同年九月一〇日被控訴会社から同年一二月二〇日を満期とする金額二、六〇〇万円の約束手形(甲第二号証)の振出を受け、右手形を前記銀行で割引を受けたが、たまたま破産会社の取引先である訴外アルコ写真が倒産に頻したことから、右アルコ写真から販売代金支払のため振出を受けた合計約一億円に近い約束手形が、一部は不渡りとなり、他の手形はいずれも銀行で割引を受けることができなくなったため、被控訴会社に対し同年一〇月以降の返済をすることが不能になった。そのため、破産会社は被控訴会社から前記二、六〇〇万円の手形の満期に前記約定による金一、七〇〇万円の手形の振出を受けることができなくなったのみならず、自己の手持資金に余裕もなかったので、右二、六〇〇万円の手形を決済することが困難な状態に立ち至った。

4  そこで、破産会社は被控訴会社から新たに運転資金として金二、六〇〇万円の貸与を受け、これをもって第一信託銀行から前記二、六〇〇万円の手形を受け戻して決済することに決し、同年一二月中旬頃数回に亘り被控訴会社に対し新規に金二、六〇〇万円の貸与を懇請した。被控訴会社は破産会社の経理状態が悪化しているのを察知し、右懇請を容易に容れなかったが、被控訴会社の取引銀行でもあった第一信託銀行から、今少し面倒をみてやれば破産会社の経理状態も好転するだろうとの助言があったのみならず、昭和三六年三月頃までには破産会社から少なくとも金二、六〇〇万円に近い金額のレンズの納入を受け得る見通しもないではなかったので、ようやく右懇請に応ずることにした。その際、被控訴会社は破産会社に対し、無担保で貸与するのであるから、破産会社の経営状態が悪化し、手形の不渡を出すような事態に立ち至ったときは、直ちに売掛代金と相殺する旨申し入れたところ、破産会社において異議なくこれを承諾した。その結果、被控訴会社は、前記二、六〇〇万円の貸与の方法として、昭和三五年一二月二〇日金額二、六〇〇万円、満期昭和三六年三月二〇日、支払地東京都港区、支払場所第一銀行株式会社新橋支店、振出地東京都中央区、振出人被控訴会社、受取人破産会社なる本件手形一通(乙第三号証の一、二)を破産会社に振り出し交付した。破産会社は、前記の如く、右手形を即日第一信託銀行(中野支店)で割引き、日歩二銭三厘の割合による満期までの九一日間の利息(割引料)として金五四四、一八〇円を差し引いた金二、五四五万五、八二〇円を受預し、右金員に自己の手持金を加えて前記甲第二号証の手形を受け戻した。

5  しかるところ、破産会社は間もなく経営状態が悪化し、後記認定の如く、遂に支払を停止したので、被控訴会社は昭和三六年三月二〇日本件手形金全額を前記銀行に支払って、これを受け戻した。

当審証人鈴木健男、小松康弘、伊東憲一、原審および当審証人中村正信の各供述中、右認定の趣旨に反する部分は、いずれも前記各証拠に照し措信しがたく、その他に右認定を覆えすに足る証拠はない。

右の認定事実によれば、被控訴会社は破産会社に対し、破産会社の運転資金として金二、六〇〇万円を貸与することを約し、その貸与の方法として昭和三五年一二月二〇日本件手形を振り出し交付し、振出を受けた破産会社において即日これを銀行で割引き、日歩金二銭三厘の割合(年利率八分四厘弱)による満期までの九一日間の利息(割引料)として金五四四、一八〇円を差し引いた金二、五四五万五、八二〇円の金員を受領したこと、および被控訴会社が満期に本件手形金全額を支払って銀行からこれを受け戻したものであることが明らかであるから遅くとも破産会社において本件手形を割引き前記金員を受領したときに、本件手形金額相当額につき金銭消費貸借が成立したものと認めるのが相当であって、控訴人主張の如く、本件手形の授受が単なる手形の貸借にすぎないものとは認めがたい。

そうだとすれば、被控訴会社が前記相殺に供した自働債権はその受働債権である破産会社の前記売掛代金債権と同種のものであり、また、前記認定の事実によれば被控訴会社主張のような相殺の特約の成立したことが明らかであるところ、破産会社が昭和三六年一月二三日手形の不渡を出し支払を停止したことは当事者間に争のないところであるから、被控訴会社が前記相殺の意思表示をなした昭和三六年一月二五日当時、被控訴会社の上記貸金債権と破産会社の売掛代金債権二、五二〇万八、七三〇円(破産会社の当時の売掛代金債権額が右金額であったことは控訴人において明らかに争わないから、自白したものとなす)とは、前記相殺の特約に基づき相殺に適する状態にあったものというべきである。したがって、破産会社の売掛代金債権二、五三九万五、一三〇円のうち、前記金二、五二〇万八、七三〇円と、そのうち昭和三五年一二月中の取引による金一、九〇八万五、九三〇円に対する弁済期の翌日である昭和三六年一月二一日から前記認定の相殺適状が生じた同月二五日までの商法所定の年六分の割合による遅延損害金一五、六七九円の債権は、被控訴会社の貸金債権と対等額において消滅したものといわなければならない。

次に、被控訴会社が、原審における昭和三九年五月二三日の本件口頭弁論期日において控訴人に対し、前記貸金債権二、六〇〇万円から右相殺によって消滅した部分を控除した残債権を自動債権として、破産会社の売掛代金債権から同じく右相殺によって消滅した部分を控除した残債権とを対当額において相殺する旨の意思表示をなしたことは、記録上明らかである。しかして前記認定の相殺の特約は、破産会社の売掛代金債権が、前記認定の如く、株式会社三信製作所外六八名に譲渡され、さらに控訴人がこれを譲り受けた場合であっても、依然その効力を有するものと解するのが相当であるから、破産会社が手形の不渡を出した後である昭和三六年一月二五日以降に発生した破産会社の売掛代金債権は、その発生と同時に被控訴会社の前記貸金残債権と相殺に適する状態にあったものというべきである。そうだとすれば、右相殺の意思表示も効力を生じ、上記貸金残債権と上記売掛代金残債権とは、前記認定の相殺適状の時にさかのぼって、対等額において消滅したものといわなければならない。

控訴人は、昭和三五年一二月一五日被控訴会社と破産会社との間に、前記貸金二、六〇〇万円の返済方法につき、昭和三六年三月以降同年九月まで前後七回に亘って分割弁済する旨の合意が成立したものであるから、上記相殺は無効である旨主張し、当審証人鈴木健男、原審および当審証人中村正信、松下俊雄、鈴木作太の各供述中には、右主張に副うような部分が存するけれども、右供述部分はいずれも後記証拠に照し措信しがたく、右各証言を措けば、他に右主張事実を認めることのできる証拠はない。却って原審証人丸山俊治、松下俊雄、原審および当審証人小松康弘の各証言によれば、被控訴会社は破産会社の右分割弁済の申入について、ついに同意しなかったことが認められる。

また、控訴人は、上記相殺の特約は破産法第七二条第一号、第二号に該当するから、本訴の提起によって否認が行使され、したがって破産管財人である控訴人に対抗できない旨主張するけれども、右相殺の特約が成立した上記認定の経過からすれば、右特約が破産法第七二条第一号、第二号に該当するものとは、とうてい認められないから、右主張も採用できない。

以上のとおりとすれば、破産会社の売掛代金債権二、五三九万五、一三〇円と内金一、九〇八万五、九三〇円に対する昭和三六年一月二一日から同月二五日までの年六分の割合による遅延損害金債権とは、被控訴会社のなした各相殺によって消滅し控訴人主張のその余の遅延損害金債権も発生しなかったというべきであるから、被控訴会社の相殺の抗弁は理由があり、控訴人の本訴請求はすべて理由がないから、失当として棄却すべきである。

右と同趣旨にでた原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、民事訴訟法第三八四条第一項に従い、これを棄却することとし、控訴費用の負担について同法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

<以下省略>。

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